DNAの複製

生物学

ここではDNAがどのように複製されるのかをみていきます。
DNAは細胞周期のうち、S期で行われます。

DNAの構造を理解していることが必要ですので、ぜひ確認してみてください!
こちらのページで詳しく解説しています!

またDNAが遺伝物質であることも、こちらのページから確認してみてください!

DNAは半保存的複製という過程をとります。

DNAの半保存的複製

複製される前のDNAは、相補的な塩基で結合した2本の鎖からなります。

まずこの塩基同士の結合が切れて、それぞれの鎖が一本鎖になります。

この一本鎖は鋳型として働くことになります。
つまり、それぞれの一本鎖に新しく塩基が相補的に結合していって、新たなDNA鎖ができることになります。

このようにして、親となるDNA分子の半分は娘のDNA分子に引き継がれることになります。

これが半保存的複製の仕組みです。

DNA複製に使われるタンパク質

DNAの複製の詳しい過程をみる前に、複製に必要なタンパク質の一覧をまとめました。

  • ヘリカーゼ
    親DNA鎖の二重らせん構造をほどく
  • 一本鎖DNA結合タンパク質
    ヘリカーゼによってほどかれて一本鎖になったDNAに結合し、2本に戻らないようにストッパーをかける
  • トポイソメラーゼ
    親DNA鎖の複製起点付近の2本鎖側に結合し、2本鎖をいったん切断する。その後ねじれを巻き戻して再び結合させることで、強くなってしまったねじれを解消する
  • プライマーゼ
    娘DNA鎖の5’末端にRNAプライマーゼを合成する
  • DNAポリメラーゼⅠ
    プライマーのRNAヌクレオチドを除去し、代わりにDNAを結合させることで、RNAが混ざった鎖をDNAのみに置き換える
  • DNAポリメラーゼⅢ
    親DNA鎖を鋳型として、ヌクレオチドを結合させていくことで娘DNA鎖を合成する
  • DNAリガーゼ
    ラギング鎖の岡崎フラグメントをくっつける

このように、多くのタンパク質がそれぞれの働きをすることでDNAは複製されていきます。

DNA複製の過程

  1. 複製の開始
     DNA複製は、複製起点という特定の場所で開始されます。複製起点は、特定のDNA配列であり、複製が開始されるシグナルを与えます。つまり特定の塩基配列が複製開始を意味しており、それを読み取ることで複製が始まるということです。
  2. 二重らせん構造の解消
     複製が開始されると、ヘリカーゼによってDNAの二重らせんがほぐれます。そして複製フォークと呼ばれるY字型の構造が形成されます。
    Yという文字の下側が二本鎖のままの部分を表し、上側が二本鎖をほどいて一本鎖になっているところを表しています。
    複製フォークは、DNAの分離が進行する方向に移動します。
     また一本鎖DNA結合タンパク質がほぐれて一本鎖になったDNA鎖に結合します。これによって再び二本鎖になることを防ぎます。
     複製フォークの先(二本鎖側)にトポイソメラーゼが結合します。2本鎖をいったん切断し、ねじれを巻き戻して再び結合させることで、強くなってしまったねじれを解消します。
  3. プライマーの結合
     DNA鎖の伸長が開始する前に、プライマーゼという酵素によってプライマーと呼ばれる短いRNA鎖がDNA鎖に結合されます。プライマーは、新しいDNA鎖の起点として機能し、DNAポリメラーゼが複製を開始するための出発点となります。
     DNAポリメラーゼはヌクレオチドを「追加」することしかできず、新たに合成することができません。
    そのため、プライマーが出発点として必要なのです。
     使用されたプライマーはあくまでもRNAなので、DNAポリメラーゼⅠによってDNAに置き換えられます。
  4. DNAポリメラーゼによる伸長
     DNAポリメラーゼは、プライマーから始まり、DNA鎖を伸ばしていきます。DNAポリメラーゼにはいくつか種類がありますが、主にDNA鎖を伸ばすのはDNAポリメラーゼⅢです。親DNA鎖の塩基配列と相補的に結合するヌクレオチドを付加していきます。このプロセスは、分離されたDNA鎖の両側で同時に行われ、複製フォークが進む方向に伸長していきます。
  5. DNAリガーゼによる結合
     DNAポリメラーゼは、連続的なDNA鎖(リーディング鎖)を直接合成することができますが、もう一方のDNA鎖(ラギング鎖)は断片的に合成されます(これについては後程詳しく解説します)。DNAリガーゼは、複製されたDNA鎖の断片(岡崎フラグメント)を結合し、連続したDNA鎖を形成する役割を果たします。これによって、完全な二重らせんDNAが形成されます。

リーディング鎖とラギング鎖

そもそもDNA鎖は、両端がそれぞれ5´末端3´末端と呼ばれ、対称ではない構造になっています。これが2本集まって二重らせん構造を形成しているわけですが、2本のDNA鎖は逆平行になっています。

つまり5´側のDNA鎖と結合しているのは3´側で、3´側と結合しているのは5´側になっています。これは逆方向の車道が組み合わさっている、片側一車線の道路のようなイメージです。

そして重要なのが、DNAポリメラーゼによるヌクレオチドの付加は、かならず5´→3´の方向になっているということです。

伸長中のDNA鎖を見てみると、3´末端のヌクレオチドに新たに付加されることはあっても、5´末端のヌクレオチドに付加されることはありません。従って3´末端が常に更新されていくイメージです。

この図において、複製フォークの進行方向、すなわち新たなDNA鎖の伸長方向は右から左です。

親DNA鎖は逆平行のため、上の親DNA鎖は左が5´末端で右が3´末端ですが、下の親DNA鎖は左が3´末端で右が5´末端になっています。

図でオレンジ色で示したように、上の親DNA鎖に対してヌクレオチドを付加するときは、その方向が5´→3´のため伸長し続けることができます。
このようにしてできるDNA鎖(オレンジ)をリーディング鎖といいます。

対して図でピンク色で示したように、下の親DNA鎖に対してヌクレオチドを付加するときは、その方向が3´→5´のためそのままでは伸長することができません
そこで本来の伸長方向とは逆方向に、短いDNA断片を複数合成します。このDNA断片は岡崎フラグメントと呼ばれます。そして岡崎フラグメントが別の岡崎フラグメントのプライマーに結合することで、不連続的にDNA鎖を伸長していきます。
このようにしてできるDNA鎖(ピンク)をラギング鎖といいます。
本来の向きには背中を向けて伸長していくわけですから、ムーンウォークのようなイメージですね。

このプライマー(図の青色)はRNAのヌクレオチドですから、DNAポリメラーゼⅠによってDNAに置換される必要があります。

またDNAリガーゼによって、DNAポリメラーゼⅠによって置換されたDNAと次(左)の岡崎フラグメントが結合します。こうして連続したラギング鎖ができていきます。

ちなみに、リーディング鎖に比べてラギング鎖は工程が複雑で、スピードがやや遅くなることからラグに由来してラギング鎖と名付けられています。

まとめ

  • DNAは半保存的複製の過程をとる
  • 様々なタンパク質が働くが、直接的にヌクレオチドを付加してDNA鎖を合成するのはDNAポリメラーゼⅢというタンパク質である
  • 伸長方向が5´→3´と指定されていることから、リーディング鎖とラギング鎖という2種類の過程をとる

このようにしてDNAは複製されていきます。

DNAの複製は、正確さが重要です。誤った複製が行われると、遺伝情報の変化や突然変異が生じる可能性があります。このため、細胞内にはDNA複製を監視・修復する仕組みが存在します。次はその仕組みを学んでみましょう!

DNA複製の校正やテロメアについてはこちら

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