がん細胞の増殖の仕組み

生物学

なぜがん細胞は異常な数まで増殖することができるのでしょうか。
このページでは、その仕組みについて詳しく見ていきます。

これらを理解するには、正常な細胞の細胞分裂の仕組みや、細胞周期について理解していることが必要です。
細胞分裂についてはこちら、細胞周期についてはこちらのページで詳しく解説しています!
ぜひ確認してみてください!

正常な細胞は、チェックポイントを通過できるかどうかで、進行が制御されています。
つまり細胞周期の数か所に信号機が設置されていて、青信号になるまで通過できないというイメージです。

チェックポイントを通過するには、進行シグナル分子を受容することが必要です。

この進行シグナルの正体は、成長因子と呼ばれるタンパク質です。
このような外部因子によって細胞周期は制御されています。

つまり細胞周期には密度依存性阻害があると言えます。
外部因子の濃度によって、細胞周期の制御が行われるということです。

このシステムによって、細胞の数が必要数に達することで、細胞分裂を停止することができます

また細胞周期には足場依存性もあります。
細胞分裂が行われるためには、細胞が細胞外マトリクスの組織などの、土台に接着していなければならないということです。
単純に言えば、組織内をゆらゆらと浮遊している細胞は、分裂をすることができないということです。

がん細胞の細胞分裂

がん細胞の場合、細胞分裂を制御することができなくなっています。

それは、がん細胞が密度依存性阻害と足場依存性のどちらも示さないからです。

がん細胞は、前述の成長因子が枯渇しても分裂を続けることができます。
この仕組みについてはまだ詳しくわかっていませんが、成長因子を自ら作り出すなどして、密度依存性阻害を持たないようになっています。

また足場依存性をもたないので、元の場所にとどまることなく分裂を続けることができます。

これが、がん細胞が転移できる所以です。

がん細胞は免疫に打ち勝つことで異常な数まで増殖して、腫瘍をつくります。
腫瘍は異常な細胞の固まりで、ほかの場所に転移しなければ良性腫瘍となります。
良性腫瘍自体は深刻な症状をもたらすことなく、手術などの治療によって完全に除去できます。

しかし腫瘍が別の部位で生存できるような遺伝的変化を獲得していた場合、転移することができます。
このような腫瘍は悪性腫瘍と呼ばれ、転移を繰り返すと治療によって除去することが難しくなってきます。

がん細胞のアポトーシス回避

異常な細胞が発生した場合は、細胞周期のページで解説したようなチェックポイントにおいてアポトーシスを誘導されることになります。

アポトーシスについて詳しく知りたい方はこちらから!

しかしがん細胞はアポトーシスを回避する能力を持っています

そのため、がん細胞が生体内で自然と消えることは期待できないのです。

従ってがん細胞にアポトーシスを誘導することができれば、がんの増殖を阻止できる可能性があります。これに関する研究は現在も行われており、がん治療の発展に寄与するかもしれません。

まとめ

  • がん細胞は密度依存性と足場依存性をもたない
  • がん細胞はアポトーシスを回避することができる

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