減数分裂とは?

生物学

ここでは減数分裂について解説します。

減数分裂とは、有性生殖を行う生物の生殖細胞(配偶子を作る細胞)が行う細胞分裂のことです。
有性生殖の場合は、親の生殖細胞から作られた配偶子(ヒトだと精子と卵子)が受精することで子が発生します。

細胞の分裂といえば体細胞分裂を思い浮かべると思いますが、体細胞分裂では染色体が複製されて2つの細胞にわかれます。つまり染色体が2倍になり、それが2つの細胞に分配されるのでもとの染色体数と同じになるという仕組みです。

しかし生殖細胞で体細胞分裂を行うと、とんでもないことが起こります。
なぜなら生殖細胞は、精細胞(精子を作る細胞)と卵細胞(卵子を作る細胞)が融合する必要があるからです。
仮に生殖細胞も体細胞分裂を行うと、精子も卵子も通常どおり2倍体ずつ、つまりどちらも46本の染色体をもっていることになります。
この2つが融合(=受精)すると、受精卵の染色体は46×2=92本の染色体をもってしまいます。

つまり親から子へ世代が変わるごとに染色体の数が2倍になってしまうのです。

これが起こらないようにしているのが、減数分裂という分裂です。
その名の通り、減数分裂は染色体を半分に減少させて配偶子を作る分裂なので、2つの配偶子が融合して元通りの染色体数になることができるのです。

減数分裂は染色体について(特に相同染色体と姉妹染色分体の違い)が分かっていないと確実に混乱します。なんだっけ?と思った方はまずこちらから確認してみてください!

減数分裂の過程

減数分裂は2回の分裂で1セットになります。
すなわち減数第一分裂減数第二分裂があり、この2つが連続して1回の減数分裂となります。
減数第一分裂と減数第二分裂の仕組みは体細胞分裂とほぼ同じですが、1セットの減数分裂で染色体は元の数の半分になり、1つの親細胞から娘細胞は4つ生じます。

一対の相同染色体(画像の赤と青のペア)を例に、概要を説明します。

まず画像のように、親細胞の染色体が複製されて、姉妹染色分体ができます。
この時点でまだ姉妹染色分体はくっついています。

次に相同染色体同士が近づき、一部の遺伝子が相同染色体間で交換されます(乗り換え)。
減数第一分裂において、相同染色体が分離されて個々の細胞に分かれて入ります。
この時点で娘細胞は2つ生じています。

そして減数第二分裂において、姉妹染色分体が2つに分かれて個々の細胞に入ります。
これによって減数第一分裂で2つに分かれたそれぞれの娘細胞がさらに2つに分かれるので、最終的に娘細胞が4つ生じることになります。
また初めの染色体の複製によって2倍になっていた染色体数は、2段階の減数分裂によって4分の1になるので、親細胞の半分の数になります。

次に間期と減数第一分裂と第二分裂の詳しい過程についてみていきます。

間期

体細胞分裂と同じように、減数分裂にも間期が存在します。
間期は分裂をしていない期間のことで、分裂の準備の期間でもあります。

間期では主に染色体の複製を行います。それぞれの染色体が複製されて、2倍になります。
これによって姉妹染色分体ができます。

姉妹染色分体どうしはコヒーシンというタンパク質によってぴったりとくっついています。

減数第一分裂

  1. 紡錘体の形成
    体細胞分裂と同様に、中心体が両極に移動します。そこから紡錘糸が伸びて、紡錘体が形成されます。
  2. 対合
    間期でコピーされた相同染色体どうしが近づき、シナプトネマ複合体によってぴったりとくっつきます。このくっついた状態を対合といいます。
  3. 交差(乗り換え)
    対合した相同染色体は、2本が交差することがあります。この交差したところをキアズマといいます。
    これが生じると、キアズマから下はもう一方の相同染色体だった部分を受け取ることになります。つまりキアズマから下の部分を交換することになります。
    つまり、相同染色体間で遺伝子が交換するということです。この現象が乗り換えです。
    乗り換えについては、後ほど詳しく説明します。
  4. 相同染色体の分離
    相同染色体は赤道面に並び、紡錘糸が結合します。ここで対合していた相同染色体が分離し、両極へと移動します。
  5. 細胞質分裂
    体細胞分裂と同様に細胞質分裂が起こり、2つの細胞に分かれます。

それぞれの娘細胞は(乗り換えしている部分を除いて)どちらか一方の相同染色体しか持っていません。従って親細胞が2倍体であったのに対し、1倍体の娘細胞が2個生じたことになります。
なお、染色体数は分裂前に複製により2倍になっていましたから、この減数第一分裂によって元の数に戻ったことになります。

減数第二分裂

減数第二分裂は体細胞分裂とほぼ同じ過程です。

  1. 紡錘体の再形成
    減数第一分裂と同様に、中心体が両極に移動します。そこから紡錘糸が伸びて、紡錘体が形成されます。
  2. 姉妹染色分体の分離
    姉妹染色分体は赤道面に並び、紡錘糸が結合します。ここでコヒーシンによってセントロメアという中央部分で結合していた姉妹染色分体は分離し、両極へと移動します。
  3. 細胞質分裂
    体細胞分裂と同様に細胞質分裂が起こり、2つの細胞に分かれます。

これによって2つに分かれていたそれぞれの娘細胞がさらに2つに分かれました。最終的に1つの親細胞から娘細胞が4つ生じました。

また減数第一分裂で1倍体になっていましたが、減数第二分裂では複製である姉妹染色分体が分離しています。よって減数第二分裂でできる娘細胞も1倍体のままです。

しかし染色体数は、減数第一分裂で親細胞の数と同じになっていましたから、減数第二分裂によってさらに半分になります。

よってヒトの細胞「2n=46」で考えると

2段階の減数分裂を経ることで、1倍体で半数の染色体数の娘細胞「n=23」が4つできることになります。

減数分裂による多様性

減数分裂によって生殖細胞には多様性が生じているといえます。
これによって同じ親から生まれた兄弟でも、多くの相違点が存在しているのです。
それは主に次の2つの現象が起こっているからです。

乗り換え

1つめは減数第一分裂で起こる乗り換えです。

減数第一分裂では、相同染色体が対合した後に相同染色体間で交差が起こることがあります。
これは単に相同染色体どうしがねじれているのではなく、交差が起こる場所(=キアズマ)でDNAがいったん切れて、もう一方の相同染色体に結合します。
つまりキアズマから下流は、もう一方の相同染色体に変わるということです。

このキアズマは1つの染色体に複数形成されることもあります。キアズマが形成できる場所は染色体上で決まっているわけではないので、どこに何個できるかによってかなりの多様性が生じます。

相同染色体が赤道面のどちらに並ぶか

減数第一分裂において相同染色体は、対合した状態で赤道面に並びます。

画像は赤道面に相同染色体が並んでいる様子を表していますが、
どちらの極にどちらの相同染色体が位置するかは完全なランダムです。

相同染色体はもともと父親由来の染色体と母親由来の染色体がセットになったものです。
(画像は青と赤で表しています。)
この父親由来と母親由来の染色体が、それぞれの相同染色体においてどちらの極に位置するか
(つまり画像では、赤が上にくるか青が上にくるか)
がランダムであるということです。

これによってこのあとできる娘細胞に含まれる染色体の組み合わせが変わりますから、多様性が生じることになります。

ヒトは相同染色体を23組持ちますから、この通り数は2²³通りあることになります。
(23組それぞれの染色体が上に行くか下に行くかという2つの選択肢を持つため、
2×2×2×2×2×2×….×2=2²³)

また、これはあくまでも1つの生殖細胞の話です。つまり精子か卵子どちらかであるということです。

受精する際は、1つの精子と1つの卵子がランダムに融合しますから、受精卵の多様性は2²³×2²³=2⁴⁶通りあることになります。

このように、キアズマによる多様性と相同染色体の組み合わせによる多様性を考慮すると、減数分裂の娘細胞は無限といっていいほどの多様性を持っています。

しかもこれは一代の生殖ですから、何代にもわたる生殖を考えるとさらに多様性は増すことになります。

そのため我々人間には全く同じ個体は存在しません。これは同じ親から生まれた兄弟においても言えることです。

まとめ

まとめ
  • ヒトの生殖細胞は減数分裂を行うことで1つの親細胞から4つの娘細胞ができる
  • 減数分裂は減数第一分裂と減数第二分裂に分かれており、染色体数は親細胞の半分になる
  • 乗り換えや相同染色体の赤道面の並びによって多様性が生じる

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