まず核酸というのは、DNAとRNAをまとめた言い方です。
DNAというのは、聞きなじみあると思いますが、生体の遺伝子を含む物質です。
RNAというのは、DNAと似た構造をもつ、様々な機能をもつ物質です。
DNAはデオキシリボ核酸で、RNAはリボ核酸のことです。
どちらも核酸のため、DNAとRNAは似た構造をもっています。そもそもDNAが遺伝情報を持っているというのはどういうことなのでしょうか?
このページでは、その構造についてみていきます。
細胞分裂の過程でDNAは複製されますが、そもそもDNAはどのような構造をしているのか知ることは非常に大切です!
細胞分裂についてもぜひこちらから確認してください!
核酸の構造
核酸は、ヌクレオチドという構造が何個もつながってできたものです。
そのため核酸はヌクレオチドの重合体という意味で、ポリヌクレオチドとも呼ばれます。
ヌクレオチドは、糖とリン酸基と塩基の、3つの要素から成ります。
糖
核酸に含まれる糖は、五炭糖(5つの炭素原子でできている糖)です。
DNAのヌクレオチドの場合はデオキシリボースという糖で、RNAのヌクレオチドの糖は、リボースです。
デオキシリボースの「デオキシ」は、オキシジェン(=酸素原子)がないという意味を表します。従って、リボースの酸素原子が1個欠けたものが、デオキシリボースなのです。
リン酸基
リン酸基は、別のヌクレオチドの糖との間でリン酸エステル結合を形成します。
これによってヌクレオチド同士は鎖のようにつながり、ポリヌクレオチドを形成します。
ちなみに、ヌクレオチドのうちリン酸基以外の部分をヌクレオシドと呼ぶこともあります。
塩基
塩基には4(+1)種類あります。
アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つです。
しかしRNAでは、チミンの代わりにウラシル(U)が存在します。
従ってRNAの塩基は、アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類です。
画像はよくイメージするDNAの二重らせん構造を表しています。
真ん中にあるカラフルなものが塩基です。
この画像のように、塩基は他の塩基と結合しますが、このとき結合できる塩基の種類が決まっています。
アデニンはチミンと(RNAの場合はウラシルと)、グアニンはシトシンとのみ結合することができます。
ちなみに塩基同士は水素結合によって結合しています。
このように塩基の結合は相補的であり、そのため二重らせんの一方の鎖の塩基配列が分かれば、対になるもう一方の鎖の塩基配列もわかるということです。
このメリットはDNAのコピーの仕組みに大いに役立っています。
また、この相補的な結合はDNAの二重らせん構造を維持するためにも必要です。
塩基のうち、アデニンとグアニンはプリン塩基と呼ばれており、チミンとシトシンはピリミジン塩基と呼ばれています。
プリン塩基はピリミジン塩基に比べて少しだけ大きいため、
プリン塩基同士もしくはピリミジン塩基同士の結合があると、結合した塩基全体の長さにばらつきが生じるのです。
そこで、プリン塩基とピリミジン塩基が常に結合することで、塩基2つ分の長さが常に等しくなり、二重らせん構造を形成できるようになっています。
ポリヌクレオチドの形成
ヌクレオチドのリン酸基は、別のヌクレオチドの糖との間でリン酸エステル結合を形成します。
これによってヌクレオチド同士は鎖のようにつながり、ポリヌクレオチドを形成します。
こうしてできたポリヌクレオチドの2つの末端には違うものがついています。
一方の端には糖の5’C(5番目の炭素原子)にはリン酸基が結合していて、もう一方の端には糖の3’Cにはヒドロキシ基が結合したままです(終点のため、次に結合するリン酸基がもうないから)。
これはそれぞれ5’末端、3’末端と呼ばれ、対称ではないということです。
対称ではないということは、5’末端→3’末端の方向性を持っているということになります。
よって5′-ATGCA-3’と結合するのは、3′-TACGT-5’というように、方向性を持ったポリヌクレオチドの鎖が相補的に結合するということになります。
DNAの構造と機能
詳しくは別のページで解説しますが、DNAの構造や機能についてみていきます。
今までみてきたように、DNAは二重らせん構造を持ち、遺伝情報の保持と伝達に関与します。しかしそもそも、DNAが情報をもっているというのはどういうことなのでしょうか?
二重らせん構造は、ヌクレオチドの塩基同士の相補的な結合によってできます。
この相補的な結合そのものが、DNAが遺伝情報を持っているということなのです。
一方の塩基配列が存在することで、そこに結合できる塩基配列が指定されます。
これによって、作られるタンパク質の種類を指定できるという仕組みです。
RNAの構造と機能
RNAはDNAと同じ核酸ですが、DNAとは少し異なる構造をしています。
画像のように、RNAはDNAのような二重らせん構造ではなく、1本鎖からなる構造をしています。
RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)など、さまざまなタイプが存在します。
それぞれで機能は異なりますが、転写や翻訳といった、DNAの情報を読み取ったり、それをもとにタンパク質を作ったりするときに活躍します。
まとめ
- 核酸とは、DNAとRNAのことである
- 核酸はヌクレオチドの集まりであり、ヌクレオチドは糖とリン酸基と塩基から構成される
- 塩基はアデニンとチミン(ウラシル)、グアニンとシトシンのみの相補的な結合をする
- DNAの末端には5’末端と3’末端があり、対称ではない
DNAが遺伝物質であることを明らかにした実験について、こちらにまとめましたので是非!
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