メンデル遺伝の法則の例外

生物学

別のページでメンデルが発見した複数の法則について解説しましたが、実は現代ではメンデルの発見に当てはまらない例が存在することが分かっています。

まずはメンデルが発見した遺伝法則について理解している必要がありますので、自信がない方はこちらから

教科書によってはこの例外をメンデル遺伝の拡張と表現することもあるようです。
このページでは、より直接的な表現として「例外」として解説します。

例外1:不完全優性

メンデルは、ある対立遺伝子ともう一方の対立遺伝子には優性(顕性)劣性(潜性)の関係があることを突き止めました。
これは、ある形質について、異なる形質の遺伝子を両方持っている場合は、優性遺伝子の形質が優先されるということです。

例えばエンドウ豆では、黄色の種子をコードする遺伝子が優性遺伝子で、緑色の種子をコードする遺伝子が劣性遺伝子になります。
そのため黄色の種子の遺伝子をもつ純系の株と、緑色の種子の遺伝子をもつ純系の株を掛け合わせると、子孫は両方の遺伝子をもつものの、種子の色は必ず黄色になります。

しかしこの結果は、完全優性の時のみに限ることがのちにわかりました。

つまり不完全優性というものが存在し、優性の程度には幅があるということです。

不完全優性というのはF1世代(子孫)が両親の形質の中間になることです。

不完全優性の例

不完全優性とは、優性対立遺伝子と劣性対立遺伝子のヘテロ接合体が、優性形質と劣性形質の中間の形質を示す現象です。

例えばオシロイバナという植物の花の色は、不完全優性を示します。

オシロイバナの例

オシロイバナの、赤色の花をつける株と白色の花をつける株をP世代とし、これらを掛け合わせてF1世代を作ります。
このときF1世代のオシロイバナはピンク色になります。

つまりヘテロ接合体であるF1世代がP世代の中間の形質を示したということです。

このページでは混合仮説について解説しましたが、この事例が混合仮説ではないことはF2世代をみることで分かります。

ピンク色になったF1世代のオシロイバナどうしを掛け合わせると、F2世代は赤色、ピンク色、白色と3種類の株ができました。

つまり、パネットスクエアで示されるように赤色のホモ接合体と、赤と白のヘテロ接合体と、白色のホモ接合体ができたということです。

これは混合仮説では説明できない事象です。もし遺伝子の混合によってF1世代が作られたのであれば、F2世代にピンク色以外の花ができることはないからです。

このように優性形質と劣性形質の中間になるのが、不完全優性です。

例外2:共優性

共優性とは、優性対立遺伝子と劣性対立遺伝子のヘテロ接合体が、優性形質と劣性形質を両方示す現象です。

共優性の例

共優性の例として、ABO式血液型があげられます。

ABO式血液型

ABO式血液型というのは、ヒトの血液に含まれる赤血球の表面に存在する抗原によって、血液型を分類するものです。

血液型はA型、B型、O型、およびAB型の4つがあります。

A型とB型の血液の赤血球の表面には、それぞれA抗原とB抗原が存在します。

O型の血液の血液の赤血球の表面には、抗原が存在しません。

そしてAB型の血液の赤血球の表面には、A抗原とB抗原が両方存在します。

AB型はA型をもつ親とB型をもつ親から生まれるため、AとBの遺伝子を両方もっているのですが、ここに優性・劣性の関係はありません。この2つは共優性のためAB型はA抗原とB抗原を両方もっているのです。

A型とB型はどちらもO型に対して優性ですが、A型とB型は互いに共優性であるということです。

不完全優性と混同するケースがありますが、

  • 不完全優性は優性形質と劣性形質の「中間」の形質
  • 共優性は2つの形質を「両方」もつ形質

であると抑えておきましょう!

例外3:連鎖

そもそも遺伝子は染色体に含まれます。
染色体は、減数分裂によって親世代から子世代へ受け継がれます。

しかし染色体は46本しかないので、当然1つの染色体に複数の遺伝子が含まれることになります。
例えばある染色体には目の色を決める遺伝子(遺伝子座)と、目の形を決める遺伝子(遺伝子座)が両方含まれるということです。
そのため目の色の遺伝と目の形の遺伝は連鎖することになります。

この場合はメンデルの独立の法則は当てはまっていないということになります。

例外4:ポリジーン遺伝(多遺伝子遺伝)

ある形質について複数の遺伝子対が影響を及ぼすことがあります。
これがポリジーン遺伝(多遺伝子遺伝)です。

ポリジーン遺伝(多遺伝子遺伝)の例には、ヒトの肌の色を決める遺伝子があげられます。

そもそもヒトの肌の色は、エンドウ豆の種子の色(黄色か緑色か)のように二者択一で表されるものではありません。黒か白かではなく、グラデーションが存在し、何通りもの肌の色があります。

この場合は、複数の対立遺伝子が肌の色という1つの形質を決めているケースが多いです。

ヒトの肌の色

ヒトの肌の色の場合は、3つの対立遺伝子によって決まります。

暗い色の肌になる遺伝子(A、B、C)と明るい肌の色になる遺伝子(a、b、c)があり、この組み合わせで肌の色が決まります。

親がどちらも「AaBbCc」をもつヘテロ接合体の場合を考えます。
「AaBbCc」×「AaBbCc」を考えるということです。

その子の中で最も暗い肌の色になるのは「AABBCC」であり、最も明るい肌の色になるのは「aabbcc」です。

「AaBbCc」は中間の肌の色になりますし、「aabBCC」も同じく中間の肌の色になります。

このように複数の遺伝子が影響しあうという点で、メンデルの考察の例外となります。

まとめ

まとめ
  • 不完全優性は優性形質と劣性形質の「中間」の形質のことである
  • 共優性は2つの形質を「両方」もつ形質のことである
  • ある形質を決める遺伝子は染色体に含まれるが、遺伝子と染色体は1対1対応するわけではなく、1つの染色体に複数の遺伝子が含まれる。従って同一の染色体に遺伝子が含まれている形質は分離の法則の例外となる
  • 複数の遺伝子によって1つの形質が決まるポリジーン遺伝が存在する

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