膜電位とは?
ヒトの細胞は、細胞膜を介して電荷のかたよりをもっています。
細胞内は相対的に負に帯電しており、細胞外は正に帯電しています。
この電位差は膜電位と呼ばれ、一定の範囲に保たれています。
一般的に細胞膜は「-100mV」というようにマイナスをつけて表されますが、これは細胞内が負に帯電していることを表しています。
では、なぜ細胞膜を介して電荷の偏りがあるのか。
それは、濃度の差と同じように電荷の偏りを物質の輸送に利用できるからです。
濃度の差が生じるところでは、受動輸送によってエネルギーを使わずに物質を輸送することができます。
受動輸送について詳しくはこちら!
電荷の偏りがあるところには、電荷の偏りを緩和する向きに受動輸送が行われます。
このように、濃度勾配に加えて電荷の偏りを加味した電気化学的勾配を考える必要があります。
ナトリウム-カリウムポンプ
膜電位は主にナトリウム-カリウムポンプによって維持されています。
始めにヒトの細胞では、
ナトリウムイオンは細胞外の方が濃度が高く、
カリウムイオンは細胞内の方が濃度が高くなっています。
ナトリウム-カリウムポンプは能動輸送によって、つまり濃度勾配に逆らってナトリウムイオンとカリウムイオンを輸送します。
つまり、ナトリウムイオンは細胞外へ、カリウムイオンは細胞内へ輸送します。
このポンプは、3個のナトリウムイオンを細胞外へ汲み出し、2個のカリウムイオンを細胞内へ汲み入れます。
ナトリウムイオン(Na+)は一価の陽イオンで、カリウムイオン(K+)も一価の陽イオンですから、差し引き一価の陽イオンを1個細胞外に放出していることになります。
つまりこのポンプは電気的にも勾配に逆らって輸送をしているということです。
このようにして、ナトリウム-カリウムポンプは膜電位を生じさせている(維持している)と考えられるのです。
プロトンポンプ
他にも電気的勾配を生じさせているポンプがあります。
プロトンポンプは、水素イオンを細胞外へ放出するポンプです。
この働きによっても細胞内は負に帯電するので、膜電位を生じさせていると考えることができます。
またこのプロトンポンプは、共役輸送という働きにも寄与しています。
共役輸送とは?
プロトンポンプによって細胞外に水素イオンが汲み出され、細胞外の水素イオン濃度が高まります。
H+-スクロース共役輸送体を通り、水素イオンは濃度勾配に従って受動的に細胞内へ輸送されます。
その際スクロースは移動するH+にくっつく形で、一緒に細胞内へ取り込まれます。
このようにしてH+の濃度勾配がほかの物質を輸送するエネルギーになっています。
このような輸送は共役輸送と呼ばれ、スクロースの他にもアミノ酸なども同様に輸送されることもあります。
まとめ
- 膜電位とは、細胞内外で生じている電位差のことである
- 濃度勾配に加えて電荷の偏りを加味した電気化学的勾配によって、受動輸送や能動輸送の向きを考える
- ナトリウム-カリウムポンプやプロトンポンプが膜電位を生じさせている
- 共役輸送によって糖などがプロトンポンプの働きによって輸送されることがある
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