アポトーシスとは?ネクローシスとは?
アポトーシスとは、細胞の自殺です。
細胞は生体内の正常な成長、発生、免疫応答、および異常な状態への対応において、適切な時期に自らで死滅する必要があります。
例えば感染症により病原体に感染した細胞は、自らが自殺することで周囲への細胞への影響を最小限にとどめようとします。
このプログラムされた細胞死の過程はアポトーシスと呼ばれます。
一方、プログラムされていない=突発的な細胞死の過程はネクローシスと呼ばれます。
ネクローシスについては後半で扱います。
アポトーシスは、細胞内外のシグナル伝達によって調節されます。
本記事では、アポトーシスの生物学的意義と過程について詳しく説明します。
アポトーシスの意義
アポトーシスは生体が生きていくうえで非常に重要です。その具体例を見ていきましょう。
- 発生過程の調節
アポトーシスは、発生過程において重要な役割を果たしています。発生段階で過剰な細胞がアポトーシスによって除去されることで、正常な組織の形成と器官の発達が行われます。 - 免疫応答の制御
免疫応答においても、アポトーシスは重要な役割を果たしています。細胞が感染や異常な変化に対してアポトーシスを起こすことで、炎症反応を制御し、免疫システムの正常な機能を維持します。つまり細胞の異常を拡大させないということです。 - 細胞のホメオスタシス
アポトーシスは、組織内の細胞の数を調節し、ホメオスタシス(恒常性)を維持する役割を果たします。細胞の老化や異常な細胞増殖を制御することで、組織のバランスを保ちます。
アポトーシスの過程
アポトーシスの過程は、細胞の種類や、アポトーシスを開始させるシグナルによって異なります。そのため一例を示します。
- 細胞膜にある受容体によって、アポトーシスを始めさせるシグナル分子が受容される
- 1によって、通常は活性型であるアポトーシスをさせないように働く分子が、不活性型になる
つまりアポトーシスにかかっていたブレーキが外れる - 様々なタンパク質分解酵素が活性化されて、アポトーシスが始まる
タンパク質分解酵素によって核酸が分解されたり、DNAが断片化されたりする - 細胞膜に特定の分子が生じ、免疫系の細胞にとって「食べていい」合図になる
- 細胞膜の透過性が異常に増加する。これにより、通常は細胞内に閉じ込められている物質や酵素が漏れ出し、周囲の組織に影響を与えることがある
身近なアポトーシス
哺乳類や陸上に生活する鳥類は、手足に指があります。
発生の段階において、もともとは指と指は繋がっています。
そして指と指の間の部分にある細胞はアポトーシスを起こし、衰退していきます。
こうして指は形成されていきます。
がんとアポトーシス
がん細胞は異常なスピードで増殖します。
これは、がん細胞がアポトーシスを回避する能力を持っていることが一因となっています。
従ってがん細胞にアポトーシスを誘導することができれば、がんの増殖を阻止できる可能性があります。これに関する研究は現在も行われており、がん治療の発展に寄与するかもしれません。
がん細胞の増殖についてはこちらで詳しく解説しています!
ネクローシス
ネクローシスは、アポトーシスとは違ってプログラムされていない細胞の死を指します。
従って異常死といわれることもあり、生体にとって悪影響を及ぼすことがほとんどです。
その原因は外傷、感染、低酸素、毒性物質の曝露など、細胞にとって有害なストレスによるものが多いです。つまり細胞の外部的な要因や環境の変化によって引き起こされるということです。
細胞膜は破壊されることが多く、細胞内の成分や細胞器が漏れ出し、周囲の組織に炎症反応を引き起こすことがあります。
またアポトーシスとは違って細胞内の水分や物質が蓄積し、細胞が腫脹します。これにより、細胞の形態が変化し、組織の機能が崩れることがあります。
したがってネクローシスは、アポトーシスとは対照的な結果をもたらし、組織の損傷や炎症の進行を促進するなど、生体にとって悪い影響を及ぼすことが多いです。
まとめ
- アポトーシスとは細胞の自殺のことである
- アポトーシスには、異常を拡大させないことや恒常性の維持などの意義がある
- がん細胞はアポトーシスを回避することで、増殖することができる
- プログラムされていない細胞の死をネクローシスという
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