DNAとは?

生物学

DNAという名前こそ誰もが聞いたことがあると思いますが、どのような構造をしているのでしょうか?そしてどのように遺伝情報が保存されているのでしょうか?

DNAの構造を学ぶには、核酸について知っておく必要があります。

核酸についてはこちらのページでまとめてありますので、まずは確認してみてください!

DNAの構造

DNA分子は二重らせん構造で、ヒトの場合は2mほどの長さです。

このDNA分子はヒストンというタンパク質に巻き付いて、ヌクレオソームと呼ばれる状態になります。

ヌクレオソーム同士はつながっているため、そのヌクレオソームの集合をクロマチンと呼びます。
クロマチンのうち、凝集しているものをヘテロクロマチンと呼び、凝集せず拡散しているものをユークロマチンと呼びます。ヘテロクロマチンの部分はぎゅうぎゅうに凝集しているため、タンパク質が近づくことができず、DNAの複製などを行うことができません。

そしてクロマチンが集まったものが染色体で、下のイラストの左側の部分です。

形質転換とは?

イギリスのグリフィスという医師が、形質転換という現象を発見しました。
ここから、遺伝情報はDNAが担っているという説が浮上してきたのです。

グリフィスはまず、病原性の細菌Sをマウス➀に投与しました。
もちろんマウス➀は細菌によって病気にかかり、死亡しました。

次に非病原性の細菌Rをマウス②に投与しました。
その結果、マウス②は生存しました。最近Rはもともと病原性を持っていませんから、死亡しないのはあたりまえの結果といえます。

次に病原性の細菌Sを加熱殺菌してから、マウス③に投与しました。
その結果、マウス③は生存しました。加熱殺菌することで細菌が死にますから、この結果もあたりまえといえます。

次に加熱殺菌した病原性の細菌Sと、生きた非病原性の細菌Rをマウス④に投与しました。
その結果、マウス④は死亡しました。病原性細菌Sは殺菌されていますし、細菌Rは非病原性ですから、マウス④は死亡しないはずです。

ではなぜマウス④は死亡したのでしょうか?

このことにより、加熱殺菌によって死んだ細菌Sにあった何かしらの物質が、細菌Rに取り込まれることで形質を転換したと言えます。これを形質転換と呼ぶのです。

しかしこの実験のみでは、「何らかの物質」がDNAかどうかはわかりません。

これを特定するために、科学者のハーシーとチェイスは、ファージを使った実験を行いました。

遺伝物質はDNA

遺伝物質がDNAであることは、主にハーシーとチェイスの実験や、シャルガフの実験から明らかにされました。

ハーシーとチェイスの実験

科学者のハーシーとチェイスは、T2ファージを使った実験を行いました。T2ファージは、きわめて単純な構造をしたウイルスの一種です。

T2ファージはDNAタンパク質のみから構成されています。

T2ファージはウイルスですから、とある細胞に感染して宿主細胞とし、自分の子孫(=ファージ)を生産するように宿主細胞のプログラムを書き換えます

この書き換えを担当するのが、DNAなのかタンパク質なのかを明らかにする実験が行われました。

実験方法はいたってシンプルで、DNAのみを標識する放射線同位体と、タンパク質のみを標識する放射線同位体を用意します。それらを使用してDNAのみを標識したT2ファージと、タンパク質のみを使用したT2ファージをそれぞれ別の細胞に感染させます。

感染した細胞を調べたところ、DNAを標識したT2ファージが感染した細胞のみから、標識に使った放射線同位体が検出されました。そしてその細胞は放射性標識されたDNAをもつファージを新たに生産したのです。

つまりDNAによって、子孫にあたるファージを生産させるという情報が宿主細胞に伝わったということが明らかになりました。

従ってDNAが遺伝情報を細胞に運んだと結論付けたのです。

シャルガフの実験

シャルガフはヌクレオチドの塩基に注目しました。

ヌクレオチドってなんだっけ?と思った方はこちらから確認してみてください!

塩基には4種類あります。
アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つです。

シャルガフは、生物ごとにこの4種類の塩基の割合を調べました。

すると、生物ごとでその割合が決まっていたのです。つまりDNAはすべての生物に共通するものではなく、生物種によって多様性を持つものだということが分かりました。これによって、DNAが種の情報である遺伝情報を担う物質である可能性が高まったのです。

さらに、どの生物においてもアデニンとチミンの割合はほぼ同じで、グアニンとシトシンの割合はほぼ同じだったのです。そこから塩基の相補的な結合が判明しました。

画像のように、アデニンはチミンと、グアニンはシトシンとのみ結合することができるということです。

これらの発見はシャルガフの法則と呼ばれます。

まとめ

  • DNAが取り込まれることで、細胞の形質が変化することを形質転換という
  • ハーシーとチェイスは、DNAを標識したT2ファージが宿主細胞に取り込まれたことから、DNAが遺伝物質であることを明らかにした
  • シャルガフは、DNAのヌクレオチドの塩基の比率が生物種ごとで異なることから、DNAが遺伝物質であることを明らかにした

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