細胞は細胞分裂を行う際に、あるプロセスに従って周期的に行います。
この細胞周期では何をしているのか、どのように進行しているのかを見ていきます。
まずは細胞分裂とはそもそも何なのかを抑えておく必要がありますので、細胞分裂ってなんだっけ?と思った人はこちらから確認してみてください。
細胞周期には、まず大きく分けて間期と分裂期があります。
間期では染色体を複製し、分裂する準備を行います。
分裂期では有糸分裂と細胞質分裂という2種類の分裂を行い、細胞が2つの娘細胞にわかれます。
間期と分裂期
細胞の種類によりますが、細胞周期全体を100%とすると、間期が占める時間はおよそ95%になります。つまり周期のうちほとんどは、分裂の準備に使われているということです。
そして残りのわずか5%の時間で、有糸分裂と細胞質分裂という2種類の分裂を行い、細胞が2つの娘細胞に分裂します。
間期
間期はG1期、S期、G2期に分かれます。全体の95%のうち、約50%がS期で、20~25%ずつをG1期とG2期が占めます。
G1期
細胞周期の最初のフェーズであるG1期は、DNA合成準備期とも呼ばれ、成長と代謝活動が活発に行われる時期です。細胞は前の細胞分裂から回復し、新たな細胞周期に向けて成長します。
G1期では、細胞は栄養状態や外部環境のシグナルによって制御され、細胞分裂への進行を決定するためのチェックポイントが存在します。
つまり、細胞分裂を行うべきがどうかチェックするための期間なのです。
S期
S期はDNA合成の期間であり、染色体の複製が行われます。
この時期では、細胞のDNAが複製され、姉妹染色分体と呼ばれる2つセットの染色体が形成されます。これにより、細胞内には染色体の数が2倍になります。
また中心体も複製されて、2倍になります。
G2期
G2期では、細胞は再び成長し、細胞分裂に必要なエネルギーや細胞質の成分を蓄積します。
また、細胞は細胞分裂に備えて適切なサイズに成長し、分裂するためのチェックポイントを通過する必要があります。
つまり、分裂期に移行するべきがどうかチェックするための期間なのです。
分裂期
分裂期は前期、中期、後期、終期に分かれます。分裂期はM期と呼ばれることもあります。
前期
まず上のイラストのように、複製された染色体が凝集して太くなり、核膜と核小体が消失します。
複製された染色体は、姉妹染色文体が2つセットになっており、セントロメアと呼ばれる中心の部位で結合しています。
またセントロメアではコヒーシンというタンパク質が仲介して、結合しています。
中期
次に上のイラストのように、染色体が赤道面にならび、中心体から伸びた紡錘糸が付着します。
赤道面とは、細胞を地球に見立てた時に赤道に当たるところ(本来は平面のため赤道を通る面)で、真っ二つに切るときの切断面とイメージをもつといいです!
中心体は細胞の両極に移動します。地球の北極と南極のような位置関係のイメージです。
後期
次に上のイラストのように、それぞれの染色体が2つに分かれて、上下に移動します。
紡錘糸によって中心体に引っ張られるイメージです。
セパラーゼという酵素によってコヒーシンが分割されることで、姉妹染色分体が分かれて、それぞれの中心体に向かって移動していきます。
終期
最後に上のイラストのように、染色体が核膜に包み込まれて核を形成します。
また、細胞質分裂が起こります。
細胞質分裂の過程はこちらにまとめてありますので、ぜひご覧ください!
細胞周期の制御
では、細胞周期はどのように制御されているのでしょうか。
そもそも細胞周期は、制御を受ける必要があります。それでないと無限に細胞周期が繰り返されることになり、それは細胞が無限に増殖することになります。
このように異常に増殖するのががん細胞であり、こちらのページで詳しく解説しています。
通常の細胞は、チェックポイントを通過できるかどうかで、進行が制御されています。
つまり細胞周期の数か所に信号機が設置されていて、青信号になるまで通過できないというイメージです。
この制御は、染色体などに異常を持った細胞が増殖することや、異常な数にまで増殖することを防ぐ非常に重要な機構です。
このチェックポイント形式の制御はシグナル分子の伝達によるものです。
そもそもシグナル分子はどのように伝達されるのか理解していることが必要ですので、まだの方はこちらから確認してみてください!
チェックポイントの制御分子
細胞周期の制御分子は、主にタンパク質キナーゼとサイクリンという2種類のタンパク質です。
タンパク質キナーゼは、サイクリンというタンパク質が結合することで活性化されて、働きます。
このためタンパク質キナーゼは、サイクリン依存性キナーゼと呼ばれます。
つまりサイクリンの濃度によって活性が変わるということです。
サイクリンが蓄積され、サイクリン依存性キナーゼが活性化するとこれらは合体して複合体を形成します。
この複合体こそが、細胞分裂を促進したり、チェックポイントを通過させたりするのです。
使用された複合体のうち、サイクリンは分解されます。
タンパク質キナーゼは分解されずに再利用されます。
このようにして、細胞周期を制御しています。
信号機に例えられるチェックポイントは、細胞周期の複数の箇所にあります。
G1期チェックポイント
例えばG1期チェックポイントです。
G1期チェックポイントとは、その名の通り間期のG1期の最初にあるチェックポイントで、ここを通過できないとG1期に入ることができません。
G1期は細胞周期の一番最初でもありますから、すなわちG1期チェックポイントは、細胞分裂自体を行うべきかどうかチェックするところとも言えます。
ここで進行許可を示すシグナルがでなければ、細胞はG0期と呼ばれる細胞分裂を行わない時期に入ります。
高速道路のサービスエリアに入るようなイメージで、わき道にそれて細胞周期から離脱します。
G2期チェックポイント
G2期チェックポイントというチェックポイントも存在します。
G2期チェックポイントとは、その名の通り間期のG2期の最後にあるチェックポイントで、ここを通過できないとG2期が終了しません。つまり、いつまでも分裂期(M期)に入ることができないということです。
ここではS期でDNAが正常に複製されて、姉妹染色分体が正しく形成されているかかどうかをチェックします。
また細胞分裂に備えてG2期で蓄えた、必要なエネルギーや成長成分がしっかりとそろっているかをチェックします。
このように細胞分裂に進むための準備が整っている場合にのみ、G2期チェックポイントを通過し、次の段階である分裂期に進みます。
もしG2期チェックポイントを通過できなかったら、修復が必要な場合は修復を試みるか、アポトーシスが誘導されることによって制御されることになります。
アポトーシスの仕組みについてはこちらからどうぞ!
これにより、DNA損傷やエラーが細胞の遺伝子情報に影響を与えることを防ぎ、異常な細胞の増殖が抑制されます。
M期チェックポイント
M期チェックポイントは、分裂期の途中にあるチェックポイントです。
ここでは、すべての染色体が赤道面に正しく並び、すべて両極からの紡錘糸に結合しているかどうかをチェックします。
このチェックは娘細胞が受け取る染色体に、欠損や過剰などの異常が発生しないために特に重要です。
これが通過できなければ、有糸分裂を行っている細胞は停止シグナルを受け取り、細胞分裂がストップします。
今回紹介した3つのチェックポイント以外にも、チェックポイントは存在します。
例えばS期にあるチェックポイントは、DNAに損傷がないかをチェックします。これによってDNAに損傷がある細胞を分裂して増やすのを防ぐことができます。
このようにチェックポイントによる制御は、染色体などに異常を持った細胞が増殖することや、異常な数にまで増殖することを防ぐ非常に重要な機構なのです。
まとめ
- 細胞は間期とM期から構成される周期で、細胞分裂を行う
- 間期にはDNAの複製など、細胞分裂の準備を行う
- M期では染色体が赤道面に並んでから徐々に両極に分かれる形で分裂する
- 細胞周期にはチェックポイントがあり、これによって制御が行われている
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