DNA複製の校正と修復・テロメア

生物学

DNAは高度なタンパク質の働きによって複製されていきます。

その過程はこちらにまとめましたので、ぜひ確認してみてください!

DNA複製は、正確さが重要です。誤った複製が行われると、遺伝情報の変化や突然変異が生じる可能性があります。このため、細胞内にはDNA複製を校正・修復する仕組みが存在します。

突然変異とは?

突然変異とは、遺伝情報に何らかの変化が生じることです。
これは、DNAの複製時に何らかのエラーが生じ、親DNA鎖を正しくコピーできなかった時に起こる可能性があります。

突然変異は、その結果が疾患などの命を脅かすような変化をもたらすこともあれば、有益な変化をもたらし、進化のきっかけとなることもあります。

しかし通常はDNAの複製はエラーが生じないようなシステムがあるため、突然変異は生じません。そのシステムをみていきましょう。

DNAポリメラーゼによる校正

DNAの複製における、娘DNA鎖のヌクレオチドの塩基結合のミスは、105に1個程度の頻度で生じるといわれています。
しかし完成したDNA鎖にエラーが残っている可能性は1010に1個程度の頻度です。

つまり、複製時にエラーが生じたとしても、その後修正されるシステムがあるということです。

伸長中の娘DNA鎖にヌクレオチドが付加されると、すぐにDNAポリメラーゼが正しい塩基のヌクレオチドが結合しているかをチェックします。

そして間違ったヌクレオチドを見つけると、それを除去して正しいヌクレオチドが挿入し、合成が再開します。

ヌクレオチド除去修復

DNAの複製ミスが生じて、それがDNAポリメラーゼによる校正を免れた場合は、ヌクレアーゼという酵素によって修復されます。

  1. XPC複合体と呼ばれるタンパク質複合体が、異常な塩基対や傷害を検出する
  2. ヌクレアーゼが間違ったヌクレオチドを切り出す
    切断は、異常な部位の両側数塩基対分(通常は20〜30塩基対)で行われます。この切断により、異常な部位が含まれたDNA断片が切り離されます。
  3. その隙間にDNAポリメラーゼによって通常通り正しいヌクレオチドを結合させる
  4. DNAリガーゼが周りのDNA鎖と修復したヌクレオチドを結合し、連続したDNA鎖にする

このような修復機構はヌクレオチド除去修復と呼ばれます。

テロメアによる末端の修復

実は、DNAの複製には大きな問題点があります。

それは、ラギング鎖が親DNA鎖を一部コピーできないということです。

ラギング鎖の形成

詳しくはこちらのページで解説していますが、

DNA鎖は両端がそれぞれ5´末端3´末端と呼ばれ、対称ではない構造になっています。これが2本集まって二重らせん構造を形成しているわけですが、2本のDNA鎖は逆平行になっています。

そして重要なのが、DNAポリメラーゼによるヌクレオチドの付加は、かならず5´→3´の方向になっているということです。

この図において、複製フォークの進行方向、すなわち新たなDNA鎖の伸長方向は右から左です。

図でオレンジ色で示したように、上の親DNA鎖に対してヌクレオチドを付加するときは、その方向が5´→3´のため伸長し続けることができます。
このようにしてできるDNA鎖(オレンジ)をリーディング鎖といいます。

対して図でピンク色で示したように、下の親DNA鎖に対してヌクレオチドを付加するときは、その方向が3´→5´のためそのままでは伸長することができません。
そこで本来の伸長方向とは逆方向に、短いDNA断片を複数合成します。このDNA断片は岡崎フラグメントと呼ばれます。そして岡崎フラグメントが別の岡崎フラグメントのプライマーに結合することで、不連続的にDNA鎖を伸長していきます。
このようにしてできるDNA鎖(ピンク)をラギング鎖といいます。

このプライマー(図の青色)はRNAのヌクレオチドですから、DNAポリメラーゼⅠによってDNAに置換される必要があります。

しかしこの時にも、DNAポリメラーゼⅠはあくまでもDNAのヌクレオチドを追加することしかできません。従って、左に別の岡崎フラグメントの3´末端が必要だということです。

では、ラギング鎖が伸長していって、親DNA鎖の末端まで到達した場合はどうなるでしょう。

ラギング鎖の末端

図のように、もう左には岡崎フラグメントは作られないため、プライマーを除去してもDNAに置換できなくなってしまいます。

その結果、空白となった箇所に結合するはずであった親DNA鎖のヌクレオチド(図の緑色部分)は、コピーされないことになってしまいます。

そこで、DNA鎖は末端にテロメアという特殊な塩基配列をもっています(図の緑色部分)。

ヒトのDNAのテロメアは、TTAGGGの6塩基の配列が100~1000繰り返した構造になっています。

テロメアは遺伝情報を持っていない塩基配列のため、コピーされなくても問題ありません。

つまり、テロメアはラギング鎖の性質によってDNAの遺伝情報のコピー漏れを防ぐために、分に作られた部分ということです。

テロメアを守る

テロメアは娘DNA鎖にはコピーされませんから、DNAが複製されるたびにテロメアは短くなってしまいます。

これが細胞が老化するということであり、テロメアがなくなるということは寿命を迎えることであると考えられています。

しかし子孫へと受け継がれていくDNAの場合は、老化するわけにはいきません。

このような生殖細胞などのDNAは、テロメアーゼという酵素によってテロメアが修復されます。
このようにして、生殖細胞などの細胞はテロメアを守り、遺伝情報がすべてコピーされ続けるようになっています。

がん細胞のテロメア

また、がん細胞もテロメアーゼ活性を持っていると考えられており、それによってDNAが短くなることなく増殖し続けると考えられています。

そのためがん細胞のテロメアーゼ活性を阻害することで、がん細胞の増殖を防ぐ研究も行われています。

まとめ

まとめ
  • ヌクレオチドの結合のミスは、DNAポリメラーゼによって除去される
  • DNAポリメラーゼによる校正を免れた場合は、ヌクレアーゼによって異常な部位が切り出されて、正しいヌクレオチドに置換されるヌクレオチド除去修復が行われる
  • ラギング鎖の末端のDNA鎖はコピーされないが、この部分はテロメアという構造になっており、遺伝情報を持たない塩基配列が余分に作られている
  • DNA複製のたびにテロメアは短くなってしまうが、生殖細胞などのテロメアはテロメアーゼによって修復されるため短くならない

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